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カルカッシの練習曲

音楽教育は古典派の音楽からでしょう。ギター音楽ではカルリやカルカッシの練習曲から始まるのではないかと思います。同時にブロウェルのシンプル・エチュードなども馴染んでおかないと後々の音楽理解の幅が広がらないのも事実でしょう。ピアノならコダーイシステムとかバルトークのミクロコスモスとかを導入している先生も少なくないはずです。

ギータにおける完全な初心者用の教本ではカルカッシの作品59が良く知られてますし、これを知らないギター教師は居ないだろうとも思います。基本中の基本ですからね。半年から1年程度で、これか同等のトイヒャルトの教本1と2が終わると、次の段階でカルカッシ作品60の練習曲集でしょう。

誰しもが初心者の頃に弾く曲ですが、なかなか良い演奏がありません。ここに紹介する演奏は25曲の全曲ではありませんが、ルイ=レオポルド・ボワイーの絵画と共に当時の様子を理解する足がかりともなるのでお勧めです。演奏はフィンランドはヘルシンキの巨匠アンドルセイ・ヴィルクス氏です。

https://www.youtube.com/watch?v=iYhNqk7_U-o&list=PL_at0TfuHmkdSpBZrs1F9gREcLeW0YrY3

ボワイーはフランス、カルカッシはイタリア生まれですが活躍の地はパリが主でした。この画家が活躍したのはヨーロッパではイギリスの産業革命がヨーロッパ中に伝搬し半世紀程度の頃です。

貧富の差が大きかったそれまでの王侯貴族の時代と異なり、ルネサンスからバロック時代にかけて発展し一般的だった撥弦楽器のリュートなどに替わって、6単弦の撥弦楽器が歴史に登場した頃です。もちろんギターはある程度ゆとりを持った市民階層の楽器でした。

そういう意味では肖像画家として当時の市民階層を描いたボワイーの絵は、カルリやカルカッシ、ソルの曲によく合ってます。

Louis-Léopold Boilly

音楽で音を楽しむ

ベンジャミン・ザンダー氏のマスタークラスです。

ギター弾きにとってはバッハの前奏曲(BWV998)シューベルトのアルペジオーネ・ソナタのマスタークラスがよく知られてますね。

今回紹介するのはウィーン古典派を代表する巨匠、ハイドンです。

さよなら交響曲、驚愕交響曲の逸話で知られるように、「ハイドンお父さん」と呼ばれ親しまれた人柄だったそうです。

ハイドンは、個性的なモーツアルトや、究極美をロマンチックに追求したベートーベンが出てくる前に個人様式を確立してます。57才のときにフランス革命でしたからバロック様式からの脱却、そして古典派の確率という生涯になりました。

https://www.youtube.com/watch?v=wfUiep-H3Oc

 

ハイドンは音楽史の流れの中では、100曲以上もの交響曲を手掛ける間にソナタ形式の形式美を不動のものとした功績があります。

宮廷音楽家としてカツラを被って演奏していたことでもわかるように、若い頃のハイドンはバロック色が強く、チェンバロを弾いてオーケストラを率いていたほどです。

後にはモーツアルトやベートーベン初期の頃にも弾いたアントン・ワルター(1752~1826)のハンマークラヴィアを弾くようになり、このハイドンのピアノはウィーン郊外のハイドン博物館に保存されており、演奏会や録音録画で使用されることもあります。

このハンマークラヴィアは、チェンバロと現代ピアノの中間に位置すると考えられる鍵盤楽器で、チェンバロのように爪弾いて発音するのではなく、ハンマーで弦を叩くという現代ピアノによく似たアクション構造の打弦楽器です。

小さく軽いハンマーを跳ね上げ弦を叩くアクション構造から生まれる音は、軽やかで歯切れの良いチェンバロやクラヴィコードに近い音色です。

共鳴箱が華奢で、チェンバロやリュートと同じように音の持続性が無く響きの減衰が早いです。これにより多声音楽でも混沌とせず各声部が薫り高く漂います。

 因みにイングリッシュメカニックの現代ピアノはロマン派の産物ですね。

ベートーベン晩年のピアノソナタ

半世紀以上になってしまった昔話ですが、中学生のときに安価な輸入盤LPレコードでブレンデルの「皇帝」を見つけ購入したのが初めてのピアノ演奏のレコードでした。

それからベートーベンのピアノ演奏と言えばブレンデルという程に彼の演奏に親しんできました。

その価値観が覆されたのがこの演奏でした。美しく粒が揃ってはっきりと鳴り響くブレンデルの響きと違う次元の音で、忘れられないコンサートになりました。1987年の秋、会場は Wiener Konzerthaus 大ホールでした。

因みに楽友協会にしてもコンツェルトハウスにしても歌劇場にしてもウィーンのコンサート会場は上部席よりも平土間の方が音が好きです。

https://www.youtube.com/watch?v=0vSPicBhjfA&t=83s

最晩年のベートーベンの作品は全く耳が聞こえず、本来は密集和音ではなく開離和音で記すべきが、耳で響きの確認ができなかったがためにハイドンとかモーツアルトのような密集和音で記されてます。

ベートーベン後期の作品を再現芸術として演奏するときには、記された楽譜が密集和音でも、ショパンやリストのように各声部が分離して綺羅びやかに響くように演奏すると美しいのですが、これがベートーベンの後期ピアノソナタ演奏の難しさだろうと思ってます。

ノーペダルのモーツアルト弾きとして知られていたピアニストのルドルフ・ゼルキン氏は、ベートーベン最晩年のピアノソナタ再現にあたってこの問題に真正面から挑んでます。音が舞い上がり、キラキラと輝いて美しいです。この演奏を凌ぐベートーベンのピアノソナタに触れたことがありません。航空力学的には不可能とされる「熊ん蜂の飛翔」を想起させてくれます。

和音を掴んだままのポジション移動

この練習曲は、ビラロボスの前奏曲4番を弾くための足がかりです。

https://www.youtube.com/watch?v=Nh0Z0DMVVvg

曲の3分の2くらいは、「pima」「pimami」2種類のアルペジオです。pはアポヤンドでimaを弾くときと右手の角度が変わらないように弾けると、難しい曲を弾くときに助かるかも知れません。

指先まで左手の形をしっかりと固定しますが、弦を押さえ込むとポジション移動ができませんから、指板上に指先を置いてゆくという動きになるのだと思います。

ビブラートは、特に4の指で押弦している2弦をmの指で鳴らすときに聞き耳を立てると良いかも知れません。

終わりの部分は良い音階練習になると思います。この音階は速度を上げたほうが曲を終わらせるのが楽ですが、テンポは遅くても大丈夫です。

楽しんで弾いていただければ嬉しいです。

アルペジオと右手親指の練習

初心者の方も楽しむことができる練習曲です。YouTubeにまともな動画が見当たらなかったので自分で弾きました。

ギター練習は、音階練習、分散和音、スラーの練習、セーハの練習が基本なのではないかと思います。この練習曲はアルペジオ(分散和音)と右手親指の訓練が目的です。

Le papillon, Op.50 - No.13 (Mauro Giuliani)、一般的にはジュリアーニのアレグロ練習曲で知られているのではないかと思います。様々な版からBachのギター譜で知られるトイヒャルト氏の教本Ⅱ版で弾いてます。

https://www.youtube.com/watch?v=7tuWR70iDtk

a-moll、つまり短調ながらジュリアーニらしい躍動感が感じられます。アレグロ表記に忠実ならもう少しテンポ速く軽快に弾くのかも知れませんが、ジュリアーニですからゲームのトンネル掘りのごとくズンズン前に進むことを思うと、この程度の速度かもしれません。

練習は、初心者用の練習曲ですから無理のないテンポから始めれば良いと思います。より良い演奏のためには、しっかりと楽器を鳴らすことの方が速弾きよりも優先です。楽譜に記されている全ての音を聴きます。

右手親指でしっかりとメロディを浮き立たせてラインを繋げるのは難しいかも知れませんが、譜面づらは単純ですから楽しんで弾くと良いでしょう。たった1分の練習曲ですから初心者の方は、毎日の練習曲にしても良いかも知れません。

それから、この曲の場合ビブラートはほとんど不必要でしょうね。古典派ですからテンポ・ルバートはタレガなどのロマン派に譲りましょう。

この練習曲の歴史様式は典型的な古典派です。カノーバの彫刻のように均整と枠組みを崩さず、2分音符は2分音符の音価、8分音符は8分音符の音価、2度の上下は滑らかに、3度の跳躍は響きを捉え、4度や5度の跳躍は音の流れを切らないように繋げ、オクターブ跳躍は音楽の流れと和音の変化も含めて繋げるのか切るのかを決めます。

可能なら余分な音を右手親指で消音するとメロディラインが浮き上がります。コーダでロッシーニクレッシェンドが出てきます。ここで追い込むことができるとロッシーニを敬愛したジュリアーニらしい躍動感が生まれます。

運指も含めて生徒さん方の参考になれば幸いです。

 

最後に尊敬する武田邦彦先生の講義を紹介しておきますね。

「それはそれで、その人にとっては、自分が得したり損したり名誉が保たれたりするんですが、科学って言うのはね、人間とは関係ないんですよ、言ってみれば自然現象ですから・・・科学は美しいモンなんですよ。絵画とか音楽とか科学とかいうのは、人間のいやらしさが無いホントに純粋で綺麗なもんなんです。」

これは、以下動画の最後の部分です。

https://www.youtube.com/watch?v=7t7ytYs2UyQ&t=611s

音楽の様式の中では、喜びや悲しみなどの人間味が溢れるのはロマン派でしょう。果てしない欲望とか情愛とか「歪んだ真珠」の魅力を徹頭徹尾追求したのはバロックです。

つまり、バッハは紛れもなくバロックの音楽家だったわけです。対して《人間のいやらしさが無い最も純粋で綺麗なもの》は、ルネサンスでありクラシックですね。

ギターの世界で純粋で綺麗なクラシック時代の音楽家は、先ずはモンセラート修道院で修行したフェルナンド・ソル、それから、まるで日本の幕末のような激動の時代にイタリア人らしく自由奔放に生きた天才マウロ・ジュリアーニ、この2大巨頭でしょうね。

ソルの活躍の場は主にロンドンでありパリでした。ジュリアーニの活躍の場は、我がウィーンでした。

イタリアのギター製作家

完成したばかりのギターに命が吹き込まれるのは、最初の数時間だというのはハウザーさんの言葉でした。もちろん楽器は奏者によって育てられますから、その後の扱いによっても鳴り方に大きな影響が現れることはあまり知られてないように感じてます。

それから、ギターの調弦は弦によって合わないときもありますが、調弦が狂ったまま弾き続けると響きのバランスがが狂ってしまうので注意が必要です。

最近はナイロンやカーボン形成時のゲージに狂いの少ない技術も開発されているようですから、技術の日進月歩に沿って常に弦の吟味も必要だと感じてます。

弦の選択は、ゲージつまり音程の均一性と音質との兼ね合いがポイントだろうと常に感じてます。

さて本題です。最近は演奏家としてのギタリストも楽器も百花繚乱の時代に入ったようです。以下YouTubeの演奏は一流の演奏家に成長してきたシュテファニー・ジョーンズさん。

https://www.youtube.com/watch?v=4dYMI6M8EXo

余談で失礼しますが、ヨーロッパのギタリストと日本のギター弾きとの大きな違いは、ミスと言うか交通事故の有無でしょうね。ミスは少ないに越したことはありませんが、ノーミスが良い演奏だとは限らないと思ってます。

今の日本ではこれだけの演奏家は育てられないような気がします。学校教育だけでなくテレビからの影響が良くないです。大勢によって形成される聴衆と言うか、大勢によって作られる流れでしょうね。これに逆らうのはきっと無理なのでしょうね。

世界史の中で繰り返されてきた民族と国々の興亡が日本にも押し寄せてきているのを強く感じてます。残念です。

歴史を学びましょう!

ファリャ「7つのスペイン民謡」

夢の共演ですね。ファリャの「7つのスペイン民謡」をソプラノ歌手ビクトリア・デ・ロス・アンヘレスがスペインの巨匠ピアニスト・ラローチャ伴奏で歌ってます。

https://www.youtube.com/watch?v=Dz83qLp29DE

 

一般的にはスペインのソプラノ歌手と言えば先月他界したベルガンサですが、イエペスのギター伴奏でこの曲集を録音してます。以下ページにSpotify(スポティファイ)リンクがあります。合掌。

追悼 テレサ・ベルガンサ《7つのスペイン民謡》YouTube動画公開

鳥の歌

「鳥の歌」と言えば何と言ってもカザルスの国連スピーチです。これを超えるこの曲の演奏は今後も出てこないのではないかと感じてます。

さて、今回はホセ・カレラスが歌うカタロニア民謡「鳥の歌」です。

https://www.youtube.com/watch?v=Ey40wh99lIA&t=206s

 

トーレスの愛奏者として知られるカルレス・トレパット氏も弾いてます。日本には居ない、と言うか、日本の聴衆が育てることのできない巨匠ですね。

https://www.youtube.com/watch?v=IaYsxmKJTGs

オルガ・ピエッリさん

こんな演奏ならラテンアメリカ音楽が好きになれます。行ったことのないウルグアイはきっと良いところなのだろうと感じさせてくれます。

https://www.youtube.com/watch?v=xj5vM65bBQs

Olga Pierriさんはウィーン国立音大ギター科教授のアルバロ・ピエッリ氏の母親なんだそうです。母は偉大ですね。

ブラジル・ギター・デュオ 

ギターデュオと言えば、ジョン&ブリーム以外で音楽の息づかいの感じられる演奏家を知りません。これは、名演奏家として知られ個人的にも好んで聴くプレスティ&ラゴヤ、名手として知られるアサド兄弟も同じで、精神活動としての芸術からは離れていると感じています。

楽友協会で演奏されたアーノンクールのマタイ、ヨハネ、h-mollメッセ、メサイア、最晩年のカラヤンのブルックナーやマーラー、ジェシー・ノーマン、パヴァロッティ、ホロビッツ、クライバーのニューイヤーコンサートで演奏されたブッ飛んだコウモリ序曲とか、晩年のゼルキンが弾いたベートーベン最後のピアノソナタ3曲、ブレンデル引退演奏会のアンコール曲、楽しかったメルビッシュ湖上オペレッタ、セゴビア、ワルカーさんの名演などの忘れられないコンサートの中に入る演奏家は少ないです。

長年ブラジルとか中南米は貧しいと思い込んでましたが、芸術に触れると、実は日本よりも豊かなんだと感じざるを得ません。Waao bravo!!!

https://www.youtube.com/watch?v=N-5OaDa0Wg0

それから、新しい弦は調律が乱れがちですが、やはり調弦で妥協してはいけないのですね。

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