初心者の方も楽しむことができる練習曲です。YouTubeにまともな動画が見当たらなかったので自分で弾きました。
ギター練習は、音階練習、分散和音、スラーの練習、セーハの練習が基本なのではないかと思います。この練習曲はアルペジオ(分散和音)と右手親指の訓練が目的です。
Le papillon, Op.50 - No.13 (Mauro Giuliani)、一般的にはジュリアーニのアレグロ練習曲で知られているのではないかと思います。様々な版からBachのギター譜で知られるトイヒャルト氏の教本Ⅱ版で弾いてます。
https://www.youtube.com/watch?v=7tuWR70iDtk

a-moll、つまり短調ながらジュリアーニらしい躍動感が感じられます。アレグロ表記に忠実ならもう少しテンポ速く軽快に弾くのかも知れませんが、ジュリアーニですからゲームのトンネル掘りのごとくズンズン前に進むことを思うと、この程度の速度かもしれません。
練習は、初心者用の練習曲ですから無理のないテンポから始めれば良いと思います。より良い演奏のためには、しっかりと楽器を鳴らすことの方が速弾きよりも優先です。楽譜に記されている全ての音を聴きます。
右手親指でしっかりとメロディを浮き立たせてラインを繋げるのは難しいかも知れませんが、譜面づらは単純ですから楽しんで弾くと良いでしょう。たった1分の練習曲ですから初心者の方は、毎日の練習曲にしても良いかも知れません。
それから、この曲の場合ビブラートはほとんど不必要でしょうね。古典派ですからテンポ・ルバートはタレガなどのロマン派に譲りましょう。
この練習曲の歴史様式は典型的な古典派です。カノーバの彫刻のように均整と枠組みを崩さず、2分音符は2分音符の音価、8分音符は8分音符の音価、2度の上下は滑らかに、3度の跳躍は響きを捉え、4度や5度の跳躍は音の流れを切らないように繋げ、オクターブ跳躍は音楽の流れと和音の変化も含めて繋げるのか切るのかを決めます。
可能なら余分な音を右手親指で消音するとメロディラインが浮き上がります。コーダでロッシーニ・クレッシェンドが出てきます。ここで追い込むことができるとロッシーニを敬愛したジュリアーニらしい躍動感が生まれます。
運指も含めて生徒さん方の参考になれば幸いです。
最後に尊敬する武田邦彦先生の講義を紹介しておきますね。
「それはそれで、その人にとっては、自分が得したり損したり名誉が保たれたりするんですが、科学って言うのはね、人間とは関係ないんですよ、言ってみれば自然現象ですから・・・科学は美しいモンなんですよ。絵画とか音楽とか科学とかいうのは、人間のいやらしさが無いホントに純粋で綺麗なもんなんです。」
これは、以下動画の最後の部分です。
https://www.youtube.com/watch?v=7t7ytYs2UyQ&t=611s

音楽の様式の中では、喜びや悲しみなどの人間味が溢れるのはロマン派でしょう。果てしない欲望とか情愛とか「歪んだ真珠」の魅力を徹頭徹尾追求したのはバロックです。
つまり、バッハは紛れもなくバロックの音楽家だったわけです。対して《人間のいやらしさが無い最も純粋で綺麗なもの》は、ルネサンスでありクラシックですね。
ギターの世界で純粋で綺麗なクラシック時代の音楽家は、先ずはモンセラート修道院で修行したフェルナンド・ソル、それから、まるで日本の幕末のような激動の時代にイタリア人らしく自由奔放に生きた天才マウロ・ジュリアーニ、この2大巨頭でしょうね。
ソルの活躍の場は主にロンドンでありパリでした。ジュリアーニの活躍の場は、我がウィーンでした。