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2023年08月03日の記事は以下のとおりです。

ロマン派とハンガリー音楽

先ずロマン派の流れから生まれた「民族主義」についてです。

ウィーンならウィンナーワルツやウィーン民謡、フランスならシャンソン、スペインならフラメンコ、フィンランドのシベリウスはフィンランディア、モルダウの曲で知られるスメタナの「わが祖国」、ドボルザーク「新世界より」など等を生み出すことになります。

北アメリカではネイティブアメリカンの根絶やしにより文化の復興が遅れ、祖国を失った人々の定着を待ってジャズやミュージカルが起きるのを待つことになったようです。

余談ながら、ミュージカルがヒットラーから逃れたウィーンのユダヤ系オペレッタ作家の渡米の影響を受けたことはあまり知られてないようです。というか、この話題はタブーですね。

https://youtu.be/nZhY1KEKFbM
 

さて、上記のYouTubeはコダーイやバルトークが円筒式蓄音機で集めたハンガリー民族音楽よりも後の時代の聞きやすい収録を選びました。このような民族音楽の追求と研究もロマン派の流れからの影響と考えられます。

ヨーロッパ唯一のアジア民族とも言えるマジャール民族は、ルネサンス時代のマーチャーシュ王の頃を最後に、民族自治を失ってしまい、19世紀後半のロマン派時代はウィーンを本拠地とするハプスブルク家の統治が続いてました。

もちろんドージャ(1470-1514)やラコッツィ(1676-1735)、コシュート(1802-1894)による民族独立の動きもありましたが、ハプスブルク支配の壁は厚く、弾圧と鎮圧の繰り返しでした。

 

ハンガリー建国は7つの部族を率いてきたアルパードによるとされています。896年のことですから日本は平安時代でした。民族統一は1000年頃のことで、キリスト教改宗でパッサウのシュテファン寺院で洗礼を受け、シュテファンと名乗るようになったイシュトヴァン王によります。

ハンガリー画家ムンカーチ「荒野の嵐1867」

マジャール族がアジアからの移動民族だったことは、蒙古斑だけでなく言語学においても証明されてます。

アブミを使って馬を操ることのできたマジャール騎馬軍団はレヒフェルトの戦い(955)でドイツのオットー大帝に敗れるまで無敵で、ドイツからオランダ方向、さらにパリ(シテ島時代)を滅ぼし、ローマを蹂躙したことは、それぞれの国の歴史であまり触れたくない事実らしいです。ウィーンにハプスブルクが君臨する数百年前のことでした。

当時、ヨーロッパ人がマジャールを見たときには殺され滅ぼされたことから、ヨーロッパ史ではゲルマン民族同様に野蛮な民族として扱われることが多いようです。

当初はどこの誰か分からなかったことから、黒海の北、現在のウクライナあたりの勇猛果敢な「10本の矢」と言われた民族だと考えられたそうです。

マジャールを10本の矢、つまりオン・オグール ⇒ オノグル ⇒ ウンガル、そしてハンガリと呼ぶようになったことは、歴史学者には良く知られた話のようです。 

19世紀後半のハンガリー画家ムンカーチ
ハンガリー平野のマジャール民族。ムンカチの絵

音楽においてもロマン派の民族主義の影響からハンガリー民族音楽についての本格的な研究が始まります。もちろんバルトークとコダーイです。ちょうど円筒式蓄音機の発明もあり、今ではYouTubeでも聞くことができます。

ハンガリーにはエジプシャンと言われたジプシー民族がヨーロッパで一番多いことから、ハンガリー民衆音楽にはジプシー音楽の影響が見られます。ジプシーは(さ迷い歩く)ウォーカー、ドイツ語なら(ヴァルカー)ワルカー等と呼ばれ、手先の器用さを活かしたミュージシャンや鍛冶屋や手工芸職人が多く居たことも知られてます。

ジプシーは、日本で包丁研ぎが村々を回って来るのを待ったのと同じように、ヨーロッパでも重宝されていたようです。特に領主たちにとっては日々の生活に小さな楽しみをもたらした軽業師やミュージシャン、それから刀鍛冶は権力の維持に必須でした。これが弱小民族のジプシーが存続した理由だったと考えられます。

ロマン派時代にはアジアの異国情緒を求めた結果、ウィーンで活躍し楽友協会の理事を務めたブラームスの「ハンガリー舞曲」だけでなく、ヨーロッパに定住したほぼ唯一のアジア系民族ハンガリー音楽に注目が集まります。

ハンガリー平原の井戸(マルコー・カーロイ1858)

ギターにもハンガリー風の練習曲が見られますが、農耕民族には見られない騎馬民族の3拍子であったり、3千キロもの距離を流れるドナウ川を挟んで広がるヨーロッパ最大のハンガリー平野地帯、大平原や少平原を移動するマジャール族気質が感じられるのは興味深いです。

ロマン派の影響ですから、馬で移動する人々の三角テントでの生活、ハンガリーのパンノニア気候は温暖で乾燥した風、その熱風対策と乗馬の都合から男も長いスカート、その白いスカートにはハンガリーの鮮やかな民族刺繍が施され、地平線の彼方まで平野が広がる景色の中で口ずさみ、かがり火を囲んで楽しんだのがハンガリー音楽の源泉です。

高崎守弘

ギター表面版の材質

ギターの表面版に使われるのはシダーかスプルースのどちらかです。便宜上シダーを杉、それに対してスプルースを松と呼ぶこともあります。

安価な楽器は全てシダーですが必ずしも音が悪いというわけではありません。シダーはスプルースよりも成長が早いので木材価格が安いだけです。鳴りが悪いのは制作コストを抑えている楽器が多いためでしょう。スプルースは最低価格帯のギターには見られないようです。鳴りの良いギターはどちらの材質でも制作可能で、良いものは良いです。


◆ Ceder/シダー

「シダー」というと「スギ」と訳されがちですが、ギターでよく使用されるのは「ウエスタンレッドシダー/western red cedar」でヒノキ科ネズコ属(クロベ属)の樹木をさします。

しかし、ヒノキ科にはその他に「スギ属」や「ヒノキ属」などもあり、これらも「シダー」と呼ばれますが、ギターに使われるのは「ネズコ属」です。日本のスギはスギ科スギ属で Japanese Cedar と呼ばれることから、Cedar=杉と混同され勝ちです。

多くのギターは表面版にシダーが使われます。スプルースの反応が遅いわけではありませんが、どちらかと言えば柔らかめの木材が撥弦反応の良さに影響しているように感じます。高性能LED懐中電灯で100m先をスポットで照らすような音質がスプルース、同じ高性能LED懐中電灯でも遠くを照射するのではなく広い範囲を照らすのがシダーというイメージです。

しっかりと作られてないシダー楽器が空虚なポコポコとした響きになったら寿命なのかも知れません。シダーの楽器を選ぶときは、作りのしっかりとした楽器の方が個人的にはお薦めです。

【科】 ヒノキ
【属】 ネズコ
【種類】 針葉樹
【別名】 ウエスタンレッドシダー
【産地】 ロッキー山脈北部、太平洋岸北西部
【気乾比重】 0.38
【強度】 2

 

◆ スプルース/Spruce

スプルースは北米からヨーロッパ、日本にも分布しています。色はシダーに比べて白っぽい見た目が特徴で、木目も淡い印象のものが多く見られます。ピアノの響板、バイオリンなどなど、ギター以外の楽器にも多く使用されてます。

スプルースには産地によって様々な名称が付けられます。

ギターでSpruceと言えば、ほとんどが北米、特にアラスカから南カリフォルニアに分布する「シトカ・スプルース」でしょう。この呼び名はアラスカのシトカ市に由来します。

スプルースは、シトカ・スプルースの他に少し軟質な北西アメリカ産の「イングルマン・スプルース」、それから、アメリカ北東部に分布し、戦前のアメリカ製ギターに使用されていたアディロンダック・スプルース(パワフルでクリアなサウンド傾向)など、ギターで使用されるスプルースは多岐にわたります。

スプルースは松と言われるだけあって、シダーのように真っ直ぐな木目の物ばかりではないようです。シダーよりも松脂が多く含まれ、木材の粘りと重さから鳴り難かったり、音の立ち上がりがシダーのように軽快では無いときもあります。

しっかりとしたタッチで鳴らさないと楽器からの音離れが悪いので、低温から高音までのバランスを自分でコントロールできないとスプルースの良さが発揮できないようです。つまり、制御されたタッチが身についているか、そうでなければ、楽器に教えられて身につけることになるのだろうと感じてます。

シダーが最初から軽快に響くのに比べて、スプルースの新作は音がこもるときが多いので、音を自分で作ってゆく必要があると感じてます。しかし良い楽器は最初から高音の音離れが良いことから購入時の判断基準になります。低音は時間とともに鳴り方が軽くなり楽器からの音離れも良くなる傾向が強いです。

【科】 マツ
【属】 トウヒ
【種類】 常緑針葉樹
【別名】 トウヒ
【産地】 北米、ヨーロッパ、日本
【気乾比重】 0.35~0.4
【強度】 3

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