ルネサンス文化
- 2021/02/17 13:20
- カテゴリー:クラシックギター
ルネサンス時代にはピアノもギターも生まれてませんでした。これらの楽器はルネサンス時代の後に来るバロック時代末期に起きた産業革命の産物と考えられます。もちろんバロック時代に一世を風靡したパイプオルガンもまだ小型の時代ですね。
ルネサンスの前は中世ですね。ヨーロッパの中世は、古代ギリシアのアルカイック期から1千250年続いた古代の後に一千年も続いたそうです。
中世時代は破壊と殺戮、疫病と迷信の混沌という坩堝の中で宗教が蔓延った時代です。そして、この中世に替わって生まれたルネサンス時代は宮廷生活の曙時代でした。
ルネサンス時代は王侯貴族による大規模な宮廷生活の前触れですから、次に来るバロック時代と異なり、個々のナイトたちが西洋の琵琶法師として、リュートのような撥弦楽器を抱えて月明かりの元で歌を謡ったり、軽業師や辻音楽師が小さな宮廷に呼ばれて腕前を披露したりという中で、ナイト社会ではパヴァーヌやメヌエットのように優雅な宮廷舞踏や、動きのある舞踏と言ってもせいぜい足を空中で入れ替えて踊る程度のガリアルドが好まれたようです。
今は中産階級の時代ですから、一般の演奏会では古典派に続くバロック音楽までは演奏されても、中産階級の時代に接していないルネサンス時代の音楽はなかなか耳にすることはありません。
ナルバエスはミランやムダーラと同じくルネサンス時代にスペインで活躍したビウエラ奏者だそうです。名作「皇帝の歌」がナルバエスの代表作です。
当時のヨーロッパで皇帝といえばハプスブルク家の神聖ローマ皇帝です。
ハプスブルク家は「結婚政策」により、ヨーロッパ内ではイギリスとフランス以外のヨーロッパ全域に領土を拡大しましたね。
ハプスブルク家がスペインを持ったのはコロンブスが東インド諸島に辿り着いた直後です。
羅針盤による大航海時代はハプスブルクの時代です。西は中央アメリカ、南アメリカ、北アメリカへと覇権を広げ、東は嵐の岬を周りそこを希望の岬と名付け、アフリカ大陸からアジアまで足を伸ばしてます。
ハプスブルク家フリップⅡ世の名を残したフィリピンそしてマリア・アンナの名を残したマリアナ諸島マリアナ海溝に至るまで領土を拡大し、当時世界最強の軍隊を持つ日本にまで迫ったほどです。
余談ですが、秀吉が国防のために朝鮮出兵したことは教科書も学校の先生も触れないようです。秀吉がフィリピンのハプスブル代官に宛てた言わば恫喝の書簡について学校の教科書に出て無いのは残念です。古事記や日本書紀から始まり、暴力革命マルクス主義や共産主義の嘘も含めて歴史の虚飾や隠蔽捏造は避けるべきだと思います。
言論統制と弾圧、無知と大衆扇動に明るい未来は無いと感じます。
さて本題ですね。
この曲は楽師ナルバエスがフィリピンの国名になったスペイン王フリップⅡ世に仕える前のことですから、スペイン王カルロスⅠ世(神聖ローマ皇帝カールⅤ世と同一人物)の時代ということになります。
スペインにも当時のスペイン王カルロスⅠ世(神聖ローマ皇帝カールⅤ世)の様子が偲ばれる絵画がありますが、最もその様子が見事に蘇るのがウィーンの美術史美術館所蔵カールⅤ世の肖像画でしょう。
文化的な気品をたたえるこの肖像の前に立つと、当時その皇帝の前で正装をしたナルバエスが御前演奏をしている姿が目に浮かぶようです。
この曲はルイス・デ・ナルバエス作曲「牛を見張れによる変奏曲( ディフェレンシアス )」です。
YouTubeにある上記の演奏は、歴史と様式を紐解きルネサンス時代へと少しでも近付こうとする演奏スタイルです。この演奏はチャレンジ精神旺盛で、演奏スタイルが興味深く、そういう意味でも素晴らしいと思いませんか。
歴史の流れを遡り、ルネサンス時代の様子を香り高く演奏するのは、この演奏も含めて簡単なことではなく、David Munrow(デイヴィッド・マンロウ)氏のような活き活きとしたルネサンス音楽の再現は、撥弦楽器の独奏で成功した演奏を未だに聞いたことがありません。
ルネサンス時代から残るオルゴールも士掛け時計について聞いたことも読んだこともありませんから、残されたタブラチュア譜を元に古楽器や文献を頼りにして、前人未到の道を切り開くのは、それだけでも一生の仕事です。
まして単純な呪文程度の楽譜に命を吹き込むことができる音楽家は滅多に居ません。
その他、ビウエラの近代的な名演はJブリームが近代ビウエラで弾く皇帝の歌やムダーラの幻想曲が素晴らしく、また、わかりやすいのでお勧めです。個人的には演奏の方向性を超越したブリームの名演の方が好きです。
ルネサンス音楽の演奏様式については、先ずは入手しやすい「フルート: クヴァンツ 」「鍵盤楽器:エマヌエル・バッハ 」「ヴァイオリン:レオポルド・モーツアルト」のバロック演奏様式についての文献を読んでからルネサンス時代の記述を調べると良いと思います。
間違いはご指摘ください。
ありがとうございます。
高崎守弘