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デイヴィッド・マンロウ

天才管楽器奏者 デイヴィッド・マンロウ(David Munrow 1942/08/12-1976/05/15)の動画です。

https://youtu.be/Vi5m54NXhYE?si=-gOWlBMv0erkM4AA

 

山田耕筰氏の後を継ぐ芸術家、というか職人が日本に生まれなかったのは、人類の大きな損失ですね。縄文時代から綿々と続く日本の心は史上最高の文化に間違いがないと感じてます。

ボクは戦後生まれですから、自国の文化を占領国により潰されてしまった直後の教育を受けてます。これが西洋音楽をやることになった一因だと思ってます。

 

西洋音楽はヨーロッパの文化です。日本の文化とは違います。使っている脳味噌が違うのですから違って当然です。興味のある方は半世紀ほど前に騒がれた「右脳と左脳」に関する書籍に触れると良いです。

さて、西洋の文化とは?西洋音楽とは?という命題に直面したときに、解答を引き出す手立てはと言うと、調べ学び考え経験することだと思います。

最後に経験が来るのは、歴史というものが途切れのない世代の繋がりそのものだからです。その歴史の中に文化があり音楽があるからです。

これは面倒な話なのですが、解る人には当たり前のことで、わからない人には難解なことです。もちろん「無知の知」を知らない人には何の意味もないことでもあります。残念ながら無知以下が存在するわけです。

西洋音楽を理解するためには音楽の根源を紐解く必要があるのですが、祈祷であったり、信号音、舞踏などが始まりだとウィーン国立音大の講義で学んだのを思い出します。

今なら、ターザンの叫びが裏声を使ったヨーデルという信号だったり、原始宗教やシャーマニズム・アニミズムに見られる唸り声だったり、アフリカの原住民に残る掛け声だったりです。

因みに古代ローマ帝国の国境はライン川を縦軸ドナウ川を横実として引かれてました。数キロごとに砦が置かれ外民族に備えてました。何処かの砦が責められると、金属板を磨いた大きな鏡で日光を反射させたモールス信号のような伝達や、狼煙を上げたり、ヨーデルで数キロ離れた隣の砦に危険を知らせることもあったそうです。

そして、現代に繋がる精神性の高い音楽への一歩は、長かった古代が終わった後に来る中世時代でした。

中世は「ゲルマン民族の大移動」とも呼ばれる混乱の時代です。戦争に次ぐ戦争、さらに相次ぐ疫病の流行、加えて恐怖政治もありました。それで暗黒の時代とも言われます。

そんな状態ですから「信じる者は救われる」とばかりにキリスト教がヨーロッパ中に覇権を拡げたのが中世時代でした。ヨーロッパのほとんどが原生林で、それを修道会が切り開いていった頃です。もちろん領主という存在が確定する前の混乱時代です。

宗教の浸透により中世時代は様々な祈祷が生まれます。

当初は乱立した祈祷でしたが、宗教組織の拡大により整理されて、イエスの使徒たちの中でも後の歴史に最も影響力があったペトロやパウロゆかりの地、ローマに本拠地を置いたキリスト教カトリックの頂点に立ったグレゴリウス1世の名を冠した「グレゴリオ聖歌」という枠が決められ、それ以外は異端となってゆきます。

グレゴリオ聖歌については過去投稿に少しだけ書いたものがあるので参照くださいね。

 

当初の聖歌が単旋律から2声を経て多声になるには長い年月が必要だったようです。シテ島のノートルダム寺院でレオニヌスやペロティヌスの考えたドローンに対する上声部の繊細な動き、さらにオルガヌムなどのアルス・アンティクアが発展し、いよいよギョーム・ド・マショーに代表されるアルスノーヴァが生まれます。

一言で言えば、これがルネサンスに向かう足音でした。

この初期の西洋音楽は記譜法が単純だったこともあり、ロマン派の懐古趣味からの再発見が発端で、芸術として再現されるときに、先ずは歴史考察からの取り組みとなったようです。

ルネサンス時代までは音楽の作りが単純明快だったこと、また肺活量や心拍数などの人の体内鼓動が現代人と大差が無かっただろうという想像力などから徐々に活き活きとした中世時代の音楽が再現されるようになってきました。

この古楽ブームは、19世紀後半のロマンチックな懐古趣味の頃と、今から半世紀以上前と2回あったようです。

ロマン派時代の古楽は、前古典派という捉え方でした。古典派よりも前の時代は、王侯貴族と宗教が社会の中心だった時代です。中産階級は知りようも無い文化ですから、当時の演奏形態や出版物は、憧れが強かった時代の産物だったように感じてます。

2回目の古楽ブームは戦後です。多くの古楽再現の音楽家が乱立する中で、ひときわ際立った音楽を示してくれたのが、若くして自殺したデヴィッド・マンロウ氏でした。

ルネサンス時代は、王侯貴族のバロック時代と異なり、単純でおおらかで、平気で自らを偽り、明日よりも今日のことを思い、喜怒哀楽に溢れ、無意識で踊ったり狂ったりしたような雰囲気を持った時代だったはずです。

マンロウ氏の再現芸術へのアプローチは、このようなヨーロッパの庶民の息吹を再現するという取り組みでした。

 ブリューゲル「農民の踊り」

宗教の時代だった1千年間の中世時代の絵画で人々の赤裸々な生活の様子を記録したものは知りませんが、ルネサンス時代に栄えたオランダのブリューゲル村出身の画家ブリューゲルの絵画には、彼が再洗礼派だったこともあり幾分シニカルながらも、ルネサンス時代の人々の様子が赤裸々に記録されてます。

上記「農民の踊り」という題名の絵画の中に響く音楽がルネサンス時代の庶民の音楽であることは間違いないでしょう。

ブリューゲルを観るにはウィーン美術史美術館に行必要がありますが、そこで完結しますから美術史美術館のブリューゲルの部屋を出る必要もありません。チャンスがあれば是非どうぞ。

中世からルネサンスにかけて生まれた西洋の音楽形式は、理屈よりも、現代に息づく音楽と同じかそれ以上に喜怒哀楽が盛り込まれてました。

長くなりましたが、今回はデイヴィッド・マンロウ氏の紹介でした。

高崎守弘

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