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ギターという楽器の歴史

  • 2024/11/22 10:40
  • カテゴリー:その他

半世紀も前に読み漁った本の内容がまとめられたサイトを見つけました。

ギターの歴史

個人的には、その後の研究により、今は当時よりも明快に把握できる時代になっていると感じてます。ですが、思い起こせば半世紀前は古楽研究の黎明期で「何処に何が残る」の確認が精一杯という頃でした。酷いときにはハイドン・モーツアルト・ベートーベンの前を全て「前古典」と括っていた程です。

40年ほど前からだったと記憶してますが、楽譜も含めて、当時の音、つまり仕掛け時計やオルゴール、市庁舎の組み鐘の響きと演奏速度が調べられた時期がありました。

この動きの始まりは60年ほど前にオランダに起きた古楽研究です。東京オリンピックの頃ですね。

加えてブリューゲルの「農民の踊り」に代表される絵画を通しても再現芸術としての研究が進んでます。

もちろんブリューゲルが異端派の宗派に染まっていたことも忘れてはいけないのですが、均整の取れた様式美が魅力であるはずのルネサンスが、実はメディチに代表される一部の人々だけのもので、一般庶民は相変わらず1千年間続いた混乱の中世の足かせから開放されていなかったことがこの絵からわかります。

ブリューゲルの絵画は、要素の配分、色のバランス、遠近法、解剖学から動植物や鳥に至るまでルネサンス時代に進歩した科学と学問の総決算です。それに比べて、描かれている人々の混乱から受ける印象は単なる庶民の大騒ぎです。この絵の説明は、いつか時間と体力のあるときにでもできればと思います。

今から70年くらい前に出版された本だったと記憶してますが、人の心拍と呼吸速度は、今と数百年前とほとんど変わってないはずだと書かれてました。もちろん再現芸術としての演奏速度についての考察です。

楽譜上の速度指定は、ベートベンの仲間だったメルツェル(1772-1838)特許のメトロノーム表示がよく知られてます。

ところが有名な音楽家たちからベートベンのメトロノーム速度指定がおかしいと言われてきました。今ではベートーベンの持っていたメトロノームが不良品だったこともわかってます。実際にベートーベンが動きのおかしいメトロノームに怒っていたことも知られてます。彼は瞬間湯沸かし器なみに切れやすい性格で、後に和解したとは言え、一時期はメルツェルとの間に確執もあったようです。

トンデモ速度のベートーベン交響曲CDが世界中で販売されていることをご存知でしょうか。確かにメトロノーム表示速度に沿った正確な演奏かも知れませんが、ほんの少しの読書で回避できる恥の上塗りは避けたいものです。

 

このような再現芸術に影響する研究は、分野を超えた情報交換が無くして実現できなかったことです。コロナ騒動で学術会議がzoom会議に変化したのは、ラップトップPCの発展とインターネット通信速度の高速化が大きく関与してます。

それにより、古代から残るレリーフと発掘された楽器の同一性、ブダペストで発掘された水圧オルガンの欠片から全容の解明が進み、楽器が再現されてます。次にはその音色や演奏された曲の様子などの研究も進んでます。

科学の進歩は想像以上に速く、自然現象と歴史の因果関係、そして楽器の分類や残された個々の楽器のレントゲン撮影、残された木片の最先端技術による解析、板の表面に残るカビに至るまで驚くほど様々な研究が進んでます。

古楽器に興味のある方は、玉石混交の文献や論文に目を通し、ウィーンのハプスブルク王宮に公開されている世界一の楽器博物館に通うと良いでしょう。

また、ギターという楽器の発生を知ろうとするなら、古代メソポタミア文明や古代エジプト文明、そしてヨーロッパ史に直結する古代ギリシア文明で確認できる撥弦楽器と、その発生の考察が必要です。

そのためには、先ず源泉が中近東や北アフリカ、古代ギリシアであることの確認。そして、その影響でヨーロッパに生まれたギターの前身を紐解き、歴史の淘汰から残った楽器の発展とトーレスが制作した近代ギターまでの道筋を明らかにすることです。

近代ギターは百年前のスペインのギター製作家トーレスに端を発するとされてます。たぶんこれに異論を唱える研究者は少ないだろうと思います。

巨匠タレガとトーレスが同時代に同地域に居たのは歴史の奇跡で、楽器の発展というよりもトーレスによる近代ギターの発明がタレガを生み出し、その影響下で腕を磨いたリヨベート、プジョール、そしてセゴビアやウィーンのルイゼ・ワルカー、アルゼンチンのマリア・ルイサ・アニードに伝わり、さらに次の世代のジュリアン・ブリーム、ジョン・ウィリアムスとその仲間たちへと続きます。

宮沢賢治「セロ弾きのゴーシュ」

  • 2024/10/03 08:00
  • カテゴリー:芸術

来る2024年10月19日と11月16日に雄踏文化センターで催される 演劇集団「浜松キッド」さんの公演で、チェロの原田孝子さんと一緒に劇中演奏での賛助出演が決まりました。

詳細案内と予約ページ↓↓↓
https://sites.google.com/view/hamamatsu-kid/gauche?authuser=0

チェリストの原田孝子さんは、長年LINEスタンプの販売やイラストレーター、ショート動画作成と講習のお仕事をされていて、今回の「劇団キッド」公演のチラシを元にYouTubeショート動画(27秒間)を作ってくださいました。次々に湧き出て来る感性が素晴らしいです。

劇団キッド「セロ弾きのゴーシュ」

この公演はスポンサーが付き、入場料がワンコイン500円という破格の料金で開催されます。演目は宮沢賢治「セロ弾きのゴーシュ」です。

1970年代に東京で開催された宮沢賢治「鹿踊りのはじまり」公演に関わったことがありましたが、彼の作品からは日本人の心の奥深くに刻まれた感性が感じられます。

ウィーンから引き上げてきて4年になって、半世紀ぶりに故郷で開けた玉手箱には、失われてしまった日本の心が収められてました。

宮沢賢治の作品には、儲け話とは別の次元で、文化活動によってのみ見つけることのできる「人の魂」が宿っているのが感じられます。自分の理解を超えた文化と精神への畏敬の念は、今の日本に一番欠けているものではないかと思います。毒杯を仰ぎ、哲学の祖として知られるソクラテスの「無知の知」です。

 

お近くの方でお時間を取ることのできる方は是非足を運んでくださればと思います。

公演はシリーズで3回、毎回異なる音楽会との組み合わせで開催されます。初回6月13日はクラシックギターで出演させていただきました。10月19日は「カムカムジョーカーズ」さん、さらに11月16日は「まぁしゃす」さんの出演です。

クラシックギターの弦高

クラシックギターの弦高は一般的には6弦が3.8mm1弦が2.8mmとか言われたりするようです。実際には様々な条件により変わるので、いつも同じ弦高ではなく、様子を見て弦高の調整をすることになります。

手っ取り早いのは2~3種類の異なる高さの駒を用意しておき、弦の張替え時に駒を取り替える方法です。

弦高の測定は専用の定規を使い、12フレットのピークから弦までの空間を測ります。

余談ですが、ハウザーさんの工房でアンヘル・ロメロさんのアラフェス協奏曲のための楽器を弾いたときがありましたが、弦高6mmぐらいで楽器も重かったのを覚えてます。当時はアランフェスといえばアンヘル氏と言われたほどで年間数百回もアランフェス協奏曲を弾いていました。

他方セゴビア用の楽器は、指板幅が広すぎて指が広がらなかったり、⑥弦高も2mmぐらいですから、今ならなんとかなるかも知れませんが、当時は音が潰れるか全く鳴らすことができなかったりで悪戦でした。それを見ていたハウザーさんが「この楽器はセゴビアにしか弾けない」と話してました。

なお、一番オーソドックスな楽器はブリーム用だったのを覚えてます。弦長が少し短い楽器でした。

そのときにハウザーさんは「弦高は低ければ低いほど良いが、弾く(鳴らす)ことができるかが問題だ」と話してました。この弦高と楽器の鳴り方の相関関係は、今となっては当たり前のこととして理解してますが、当時は全くわかず、大きなクエスチョンマークが脳裏に刻まれました。

最近はスマホ用アプリに様々なオシロスコープがありますから、自分の耳に自信が無ければ、波形を確認しても良いかも知れません。

以下はYouTube(Classical Guitar Corner)動画から

弦番号 普通 高め 低め
3.0mm 3.2mm 2.8mm
3.4mm 3.5mm 3.2mm
3.5mm 3.6mm 3.4mm
3.7mm 3.8mm 3.5mm
3.9mm 4.0mm 3.6mm
4.0mm 4.2mm 3.7mm

ギターは調弦時の音高で弦の振動が変わります。振幅や発音アタック、倍音の鳴り方も調弦時の音高の影響を受けて変化します。

調律ピッチ(音高)は、1791年没のモーツアルトが422Hz、1885年にウィーンで決められたのが435Hz、1939年にロンドンで決められたのが440Hz、日本では20世紀後半からは442Hzで調律されるピアノが多いようです。それから現在のウィーンはもう少し高い444Hzとか、ウィーンフィル終演時には446Hzぐらいまで上がっているとか言われてます。

引き上げ後に何人かのピアノ調律師さんに確認したところ、今は440Hzではなく442HZで調律するのが一般的なんだそうです。ですから、他の楽器とのアンサブルを考えると、ギターも今の日本なら442Hzのピッチで調弦することになります。

つまり日本でのギターの弦高は、442Hzの調弦で鳴るように決めるのが安全だと言うことになります。

フラメンコ「ガロティン」

  • 2024/08/06 09:26
  • カテゴリー:その他

できることから地道に急いでという感じの郷里での終活が過ぎゆきます。

昨年の山内しほさんとのフルート重奏「タンゴの歴史」は大変でした。しほさんにとてもお世話になりました。感謝に耐えません。

とにかく、40年前のウィーン国立音大の演奏家過程ではピアソラはやらなかったし、南米の民謡程度にしか感じてなかったので、自分がタンゴを弾くとは夢にも思ってませんでした。しほさんからのコンタクトがあったときに、20分以上の難局にしっかりと取り組むギタリストがこの界隈では他に居ないのでお受けしました。

その「タンゴの歴史」公演のときに、たまたまチラシを目にした幼馴染が、ボクの名前を見つけて公演に来てくれました。

郷里とは言え47年間、つまり半世紀も離れていたので、友人も知人も居ないと思っていたし、終活だから仕方ないと諦めてました。ですから高校時代の仲間や幼馴染みが覚えていてくれて驚きました。有り難いことです。

そのときに会いに来てくれた仲間が今でもフラメンコギターを続けていると言うので、ギターを持ち寄って一緒に遊んでいるうちに、何か一緒にできないかと模索が始まってます。ジャンルが違うので、なかなか大変です(笑

そんな日々が過ぎ行く中で、小公演を高校時代に親しかった別の仲間が組んでくれて、JAZZフラメンコの彼、それから彼の仲間のフラメンコ踊り子さんと3人での公演実現となりました。

それで「ガロティン」というフラメンコ曲の旋律を弾くことになりました。「こんな曲」と踊り子さんがギターをポロポロ弾いた動画を送ってくださったり、手書きで旋律を送ってくださったりで、ホントに有り難いことです。

こんなに甘やかされて良いものかと痛み入る次第で、至れり尽くせりです。でも、楽典、ソルフェージュ、聴音も和声学も対位法とも無縁なフラメンコの踊り子さんが楽譜を起こしても、拍も音価も間違いだらけです。これは大変だっただろうと想像できます。

しかし、その間違った楽譜で弾くのは不可能です。

 

検索してみるとガロティンは、どうやら歌謡らしいです。でも、踊り子さんが送ってくださったYouTubeのURLを開いても、日本人の公演では全然わからない。それよりも、目を覆わんばかりの品の無さに嫌気が差すほどです。

フラメンコ踊り子さんは、当然ながらフラメンコの踊りが専門です。アルス・ノーヴァのギョーム・ド・マショーとかとは世界が違いすぎます。

でもセゴビアが言っているように「本物のフラメンコは素晴らしい」の通り、フラメンコは素晴らしいハズ・・・です。

セゴビアの言葉の意味するところは、洋の東西を問わず偽物ばかりが横行しているという事実です。類は友を呼ぶの言葉通り、偽物でもなんでも楽しければそれで良いから、自分が楽しんでいる様子を見てオマエも楽しめ! という人達が集まる世界があるわけです。残念ながら数ではその方が多いです。

そんな状況で先週から練習室を借りての合わせ練習が始まりました。昨日は2回目の合わせです・・・当然ながら全然ダメでした(笑;

それで去年のピアソラ同様に、仕方なくゼロからの独学です。やるとなったら本気です。イベリア半島とは?スペインとは?スペインに暮らす民族とは、文化とは???

以下サイトはフラメンコについてわかりやすく説明してくださってます。おすすめです。

フラメンコの曲種とリズム別一覧

 

本物のフラメンコは魅力いっぱいです。偽物じゃないってところが要です。

上記サイト紹介の「ガロティン」演奏
フラメンコの曲種とリズム

「あたしの亭主はあたしのもの
他の誰のものでもない
あたしの亭主が欲しいなら
力ずくで奪ってごらん
できるものならね」

「Mi marío es mí marío
y no es marío de naide
la que quiere a mi marío
Vaya a la guerra y lo gane.」

おーれぇ~♬  笑


因みに、ウィーンのおける文化とか気質は、質実剛健なゲルマン気質、自然とともに生き続けたアルプスの素朴な生き様、ハプスブルク帝国の都として繁栄を極めた街の持つ文化などが上げられると思います。

どうやらイベリア半島では地方によって文化が少しずつ異なるようです。チロル地方で、それぞれの谷により文化が異なるのと似てますね。

ゲルマン民族の移動時代にイベリア半島にラテン系の民族が流入定着し、そこにムーア人と言われるイスラム教徒が侵入し征服したわけですが、数はヨーロッパ人の方が遥かに多かったので、北アフリカやイスラム文化からの影響に差が出た結果だろうと想像してます。興味のある方は金槌のカール(カール・マルテル)を調べると良いでしょう。

 

何事も学びですが、こんなに学んでも、死んだら何も残らない。
誰よりも学んで理解し知っているのにホントもったいない・・・

デイヴィッド・マンロウ

天才管楽器奏者 デイヴィッド・マンロウ(David Munrow 1942/08/12-1976/05/15)の動画です。

https://youtu.be/Vi5m54NXhYE?si=-gOWlBMv0erkM4AA

 

山田耕筰氏の後を継ぐ芸術家、というか職人が日本に生まれなかったのは、人類の大きな損失ですね。縄文時代から綿々と続く日本の心は史上最高の文化に間違いがないと感じてます。

ボクは戦後生まれですから、自国の文化を占領国により潰されてしまった直後の教育を受けてます。これが西洋音楽をやることになった一因だと思ってます。

 

西洋音楽はヨーロッパの文化です。日本の文化とは違います。使っている脳味噌が違うのですから違って当然です。興味のある方は半世紀ほど前に騒がれた「右脳と左脳」に関する書籍に触れると良いです。

さて、西洋の文化とは?西洋音楽とは?という命題に直面したときに、解答を引き出す手立てはと言うと、調べ学び考え経験することだと思います。

最後に経験が来るのは、歴史というものが途切れのない世代の繋がりそのものだからです。その歴史の中に文化があり音楽があるからです。

これは面倒な話なのですが、解る人には当たり前のことで、わからない人には難解なことです。もちろん「無知の知」を知らない人には何の意味もないことでもあります。残念ながら無知以下が存在するわけです。

西洋音楽を理解するためには音楽の根源を紐解く必要があるのですが、祈祷であったり、信号音、舞踏などが始まりだとウィーン国立音大の講義で学んだのを思い出します。

今なら、ターザンの叫びが裏声を使ったヨーデルという信号だったり、原始宗教やシャーマニズム・アニミズムに見られる唸り声だったり、アフリカの原住民に残る掛け声だったりです。

因みに古代ローマ帝国の国境はライン川を縦軸ドナウ川を横実として引かれてました。数キロごとに砦が置かれ外民族に備えてました。何処かの砦が責められると、金属板を磨いた大きな鏡で日光を反射させたモールス信号のような伝達や、狼煙を上げたり、ヨーデルで数キロ離れた隣の砦に危険を知らせることもあったそうです。

そして、現代に繋がる精神性の高い音楽への一歩は、長かった古代が終わった後に来る中世時代でした。

中世は「ゲルマン民族の大移動」とも呼ばれる混乱の時代です。戦争に次ぐ戦争、さらに相次ぐ疫病の流行、加えて恐怖政治もありました。それで暗黒の時代とも言われます。

そんな状態ですから「信じる者は救われる」とばかりにキリスト教がヨーロッパ中に覇権を拡げたのが中世時代でした。ヨーロッパのほとんどが原生林で、それを修道会が切り開いていった頃です。もちろん領主という存在が確定する前の混乱時代です。

宗教の浸透により中世時代は様々な祈祷が生まれます。

当初は乱立した祈祷でしたが、宗教組織の拡大により整理されて、イエスの使徒たちの中でも後の歴史に最も影響力があったペトロやパウロゆかりの地、ローマに本拠地を置いたキリスト教カトリックの頂点に立ったグレゴリウス1世の名を冠した「グレゴリオ聖歌」という枠が決められ、それ以外は異端となってゆきます。

グレゴリオ聖歌については過去投稿に少しだけ書いたものがあるので参照くださいね。

 

当初の聖歌が単旋律から2声を経て多声になるには長い年月が必要だったようです。シテ島のノートルダム寺院でレオニヌスやペロティヌスの考えたドローンに対する上声部の繊細な動き、さらにオルガヌムなどのアルス・アンティクアが発展し、いよいよギョーム・ド・マショーに代表されるアルスノーヴァが生まれます。

一言で言えば、これがルネサンスに向かう足音でした。

この初期の西洋音楽は記譜法が単純だったこともあり、ロマン派の懐古趣味からの再発見が発端で、芸術として再現されるときに、先ずは歴史考察からの取り組みとなったようです。

ルネサンス時代までは音楽の作りが単純明快だったこと、また肺活量や心拍数などの人の体内鼓動が現代人と大差が無かっただろうという想像力などから徐々に活き活きとした中世時代の音楽が再現されるようになってきました。

この古楽ブームは、19世紀後半のロマンチックな懐古趣味の頃と、今から半世紀以上前と2回あったようです。

ロマン派時代の古楽は、前古典派という捉え方でした。古典派よりも前の時代は、王侯貴族と宗教が社会の中心だった時代です。中産階級は知りようも無い文化ですから、当時の演奏形態や出版物は、憧れが強かった時代の産物だったように感じてます。

2回目の古楽ブームは戦後です。多くの古楽再現の音楽家が乱立する中で、ひときわ際立った音楽を示してくれたのが、若くして自殺したデヴィッド・マンロウ氏でした。

ルネサンス時代は、王侯貴族のバロック時代と異なり、単純でおおらかで、平気で自らを偽り、明日よりも今日のことを思い、喜怒哀楽に溢れ、無意識で踊ったり狂ったりしたような雰囲気を持った時代だったはずです。

マンロウ氏の再現芸術へのアプローチは、このようなヨーロッパの庶民の息吹を再現するという取り組みでした。

 ブリューゲル「農民の踊り」

宗教の時代だった1千年間の中世時代の絵画で人々の赤裸々な生活の様子を記録したものは知りませんが、ルネサンス時代に栄えたオランダのブリューゲル村出身の画家ブリューゲルの絵画には、彼が再洗礼派だったこともあり幾分シニカルながらも、ルネサンス時代の人々の様子が赤裸々に記録されてます。

上記「農民の踊り」という題名の絵画の中に響く音楽がルネサンス時代の庶民の音楽であることは間違いないでしょう。

ブリューゲルを観るにはウィーン美術史美術館に行必要がありますが、そこで完結しますから美術史美術館のブリューゲルの部屋を出る必要もありません。チャンスがあれば是非どうぞ。

中世からルネサンスにかけて生まれた西洋の音楽形式は、理屈よりも、現代に息づく音楽と同じかそれ以上に喜怒哀楽が盛り込まれてました。

長くなりましたが、今回はデイヴィッド・マンロウ氏の紹介でした。

高崎守弘

夢うつつ

  • 2024/07/21 23:17
  • カテゴリー:芸術

ボッシュの3大作の内の一点はうウィーンのアカデミー美術館に公開されてます。彼の3大作3点ともに同じ作風ですが、マドリードのプラド美術館のボッシュも飽きずに観てられます。行ったときにはゴヤの大作から少し離れた部屋ですから探してみると良いでしょう。

ボッシュの絵画ももちろん芸術ですから、超現実主義(シュールリアリズム)は無論のこと、同市アトーチャ駅界隈で公開されている悲しみの画家ピカソの「ゲロニカ」や「泣く女」、国連演奏で知られるカザルス「鳥の歌」も好き嫌いではなく、人の思いとか、想いを乗せた感性と言う視点で接すると、自分の中に眠っている様々な想いや、果てし無く広がる夢を見つけることができます。

以下 YouTube動画はボッシュの魅力をわかりやすく魅せてくれてます。夢を見せてくれるのはシャガールだけではなく、その数百年も前に既にボッシュが抱いた夢を私達に語ってくれてます。

https://youtu.be/5VXemWpC0oc?si=qMu1UmzSBtpjZqqS
El jardín de las delicias, Hieronymus Bosch

最近のサバレス弦

張りたてのハナバッハ黒は無敵だろうと感じてます。半世紀ぐらい前から品質に変化が無いのも安心です。

でも、最近のサバレス弦と比較すると、ハナバッハ黒は張り替えて5日後くらいには低音弦(巻き弦)の倍音が痩せてきて、張りたて時に低音弦が少しキンキンと響いたサバレスの低音弦の方が華やかに響くように感じてます。

サバレス弦は色々な種類が販売されてますが、低音弦なら倍音も含めて安定した振動と耐久性でCANTIGA PREMIUMの一択。ハナバッハ弦に弾き慣れていると、サバレス低音弦の甲高い響きが気になるかも知れませんが、右手親指の弦からの指離れである程度対応できます。

サバレス低音弦は張力の違いによりNORMALEFORTEの2種類が販売されているようです。弱い張りで上手に鳴らすことができればそれに越したことは無いと思いますが、ちょっと気を緩めるとボヨォ~ンと腑抜けた音が出るので、ボクのように注意力散漫な人には張りが強い方が安心できるかも知れません。

サバレス弦は高音弦のバリエーションも豊富で、①②③弦はナイロンとカーボンの組み合わせ方により3種類販売されてます。

サバレスの高音ナイロン弦は音色が素晴らしく艷やかながら、ボクには弱くボヨボヨするときがあります。また、ナイロン弦はフレットと右爪の両方で傷が付くので音程と音色に影響します。

もちろん弦を指で撫でて撥弦する分には気にならないでしょう。弦を撫でての撥弦は日本人独特の演奏です。ヨーロッパでは器用に指が動くので最初は聴いてもらえますが、そのうち相手ににされなくなる理由です。

カーボン高音弦は音がカチッと決まるのですが、音色に艶が少なくビブラートの音高幅が狭い、しかし傷に強く長期間の使用でも音の劣化が気になりにくいです。

値段は今のところサウンドハウスさんが安いようです。もちろん楽天やアマゾン等でも扱ってますね。

◇ サバレス / Evolution Cantiga PREMIUM/ -Normal tension-[510ERP]
低音弦:CANTIGA PREMIUM (TENSION NORMALE)
1弦:NEW CRISTAL (TENSION NORMALE)
2&3弦:ALLIANCE(カーボン、TENSION NORMALE)
https://www.soundhouse.co.jp/products/detail/item/329480/


◇ サバレス / CREATION Cantiga -Mixed tension- [510MRJ]
低音弦:CANTIGA PREMIUM (TENSION FORTE)
1&2弦:NEW CRISTAL (TENSION NORMALE)
3弦:ALLIANCE(カーボン、TENSION NORMALE)
https://www.soundhouse.co.jp/products/detail/item/233681/


◆ サバレス / ALLIANCE/CANTIGA PREMIUM -Normal tension- [510ARP]
低音弦:CANTIGA PREMIUM (TENSION NORMALE)
高音弦:ALLIANCE(カーボン、TENSION NORMALE
https://www.soundhouse.co.jp/products/detail/item/259412/


◆ サバレス / ALLIANCE/CANTIGA PREMIUM -Mixed tension- [510ARJP]
低音弦:CANTIGA PREMIUM (TENSION FORTE)
高音弦:ALLIANCE(カーボン、TENSION NORMALE
https://www.soundhouse.co.jp/products/detail/item/259413/


◆ サバレス / ALLIANCE/CANTIGA PREMIUM -High tension- [510AJP]
低音弦:CANTIGA PREMIUM (TENSION FORTE)
高音弦:ALLIANCE(カーボン、TENSION FORTE
https://www.soundhouse.co.jp/products/detail/item/259411/

裏板と側面板のローズウッド

ギターの側面板と裏板には一般にローズウッドと呼ばれる木材が使われることが多いです。最近はワシントン条約の関係から白い色をした板も使われることもあるようですが、ずっしりとした響きが乏しいように感じてます。

ギターに使われるローズウッドは、ドイツ語圏では「パリサンダー」と呼び、絶滅した南米リオ産パリサンダーは暗い色合いのものもあり、重量もそれなりに重くなるようです。ハウザーさんの話では、リオ産の入手ができないときはインド産パリサンダーも使われることがあるとのことでした。

工房ストックで一番色の黒い板を使っての制作を依頼したところ、黒い色の板を使うと楽器の重量が増すけど、それでも良いのか?また、横板と裏板の材質は、彼の考える音には無関係で「段ボール」でも構わないとも話してました。

凡人のボクには理解を超えた話でした。

さて、ローズウッドとか紫檀についてググってみました。

参照ページ:
ローズウッドについて(世界のローズウッドの一覧表)

 

◆ 紫檀(ダルベルギア・コチンキネンシス)
【別名】シアム・ローズ、サイアミ・ローズ
【産地】タイ・ビルマ・ラオス・ベトナム・カンボジア・マレー半島

◆ 縞紫檀(しましたん/ダルベルギア・オリペリ)
【別名】手違い紫檀、チンチャン
【英名】ビルマ・ビルメス、チューリップ・ツリー
【中国名】白紫檀
【産地】タイ・ビルマ・ラオス・ベトナム・カンボジア・マレー半島
   産地によりベトナム・ローズ、ラオス・ローズ等と呼ぶこともある

◆ インド・ローズウッド(ダルベルギア・ラテフォーリア)
  インドネシア・ローズ(ソノケリン)
【別名】イースト・インディアンローズ、ボンベイ・ローズ、デガン・ローズ、カシミール・ローズ
【中国名】印度丸葉紫檀
【産地】インド・パキスタン・バングラディッシュ

◆ インド・チッソ―(ダルベルギア・チッソ―)
【英名】シーシャム・ローズ
【中国名】印度黄檀、茶檀
【産地】インド北部、ネパール、パキスタン、バングラディッシュ

◆ マダガスカル・ローズ(ダルベルギア・バロニー)
【英名】ロイヤル・パリサンダー、ボアナ・パリサンダー
【仏名】ロワイヤル・パリサンドル
【産地】マダガスカル





ロマン派

  • 2023/12/22 15:38
  • カテゴリー:芸術

ヨーロッパでは、イギリスから始まった産業革命がヨーロッパ大陸に浸透するにつれて、新しく生まれた中産階級が勃興します。この市民階級の民衆が、それまでの王侯貴族の生活や宗教のシガラミから開放されるにつれて、それまで無かった一般庶民の文化を生み出してゆきます。

これが、壮麗、豪華、過度な強調のバロックとの決別に繋がり、フランス革命に代表される歴史の大きな変化を生み出します。つまり、中世時代の混沌から脱したルネサンスや、その源泉とも言える古代ギリシア時代への回帰です。今から2百数十年前のことでした。

因みに古代ローマ文化は古代ギリシア文化をそっくり継承してます。言葉が古代ギリシア語から古代ローマのラテン語に変化しただけです。ゼウスがユピテル(英:ジュピター)、アポロンがアポロ(英:アポロ)、アテナがミネルウァ(英:ミネルヴァ)などです⇒ウィキペディア

この中産階級の文化は、最初のうちは、王侯貴族への憧れもあってギャラント様式ロココ様式のような、それまで培われてきた華やかなバロック文化の影響が残った過渡期の様式も見られましたが、その後はそれまでの難解な文化よりも、単純明快でわかりやすい古典的なものが主流になってゆきます。

この変化は、中産階級の中でもブルジョアジーと言われる富裕階層の文化が、徐々に一般庶民へと幅広く浸透していった結果の表れだろうと理解してます。

音楽なら、難解なポリフォニーから単純明快なホモフォニーへの移行であり、庶民にもわかりやすい夢や表面的な華やかさの追求結果と捉えてます。

この動きが、ドラマの時代と言われたバロックから、音楽の時代と言われた古典派、さらに文学の時代と言われたロマン派への変化へと繋がってゆくことになります。

ビーダーマイヤー画家カール・シュピッツヴェーク

ロマン派の時代は19世紀半ばから後半と考えられますが、例外も散見され、初期には音楽と文学とのコラボでドイツ歌曲を生み出したシューベルトや、シラーのテキストとのコラボにより生まれたシンフォニー「第9」で知られるベートーベン、さらに南米などでは後追いの形で現在に至るまでロマン派の傾向が残ってます。

子供の情操教育には夢に溢れるロマン派の文学が良いですね。 

ロマン派の産物としては、遠い昔に想いを馳せたグリム兄弟に代表されるメルヘン、ヨーロッパと異なる文化への憧れから生まれた漂流記や旅行記、または理解のし易い身近な生活に密着した内容の文学です。もちろん、このような傾向は文学だけでなく絵画や音楽にも見られます。

音楽においても、このような時代の影響から文学との融合という試みが始まります。ベートーベンの第9はその先駆けとも考えられます。ロマン派の典型的なものは、音楽では交響詩や楽劇であり、一般庶民の生活に密着した民衆劇、さらに大きな流れとしては歴史主義や民族主義の台頭へと繋がってゆきます。

関連:ビーダーマイヤー様式

高崎守弘

前奏曲(プレリュード)

前奏曲(プレリュード)は、元々は弦数の多いリュートの調弦確認と指慣らしのために、演奏の前に和音を中心に楽器を鳴らしてみたものが記譜されるようになったものだそうです。

そのため、演奏の基本は、幅広い速度で和音を良く響かせるのが前奏曲です。そして、曲の性格上テンポ・ルバートで比較的自由に演奏します。

当初、リュートの弦数が多くなった時代(バロック時代)には、主体となる曲の前にプレリュードが演奏され、その後に本曲の演奏という順番でした。それが、古典派を経てロマン派になると、自由な和音の繋がりを楽しむ小品としてプレリュード単体で作曲演奏されるようになりました。

 

様々なプレリュードがある中で、オーケストラ曲では個人的にはリストのプレリュードが好きです。

可能なら総譜をめくりながら聴くと良いですね。オーケストレーションはラベルが良く知られてますが、響きの織りなしは、どうやらリストに軍配が上がるようです。

https://www.youtube.com/watch?v=G5aITdUMADo

このDr.カール・ベーム1943年ベルリン・フィルの動画は残念なことに一部だけです。フルトヴェングラー1954年のウィーンフィル(⇒mp3音声のみ)も凄まじいですね。圧倒されます。

その他、リストの前奏曲の全曲演奏は ⇒ こちらの動画。ベストを尽くした楽団員ひとり一人の勝利が感じられます。

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